生きていてよかった
生きていてよかった
生きているのか死んでいるのかよくわからないような日々でした 朝日の光を浴びることがしんどくて身体が嫌がり、家族からの罵声に絶望し、死んだように眠り、もう死んでしまいたいけど痛みのこわさに負けて、ついに途方にくれてぼーっとただぼやけた視界を前に時間と同化して濁った空気として過ごしました
死にたい そう強く思ってもカラダを傷つけることはできなくて、なぜなら自己のそれが致命傷になる案件を抱えているから こうしたストッパーに感謝しながらもおかげで途方にくれました
そんなとき 待ってていいよの一言で堰を切ったように愛する人のところへ 待ちぼうけして疲れちゃったところにあらわれたそのおかたと喋って気づきました 表情を忘れたこと 笑い方を忘れたこと 夜は人間の眠る時間であること ふつうは理由がないと涙は出ないこと どれもバカバカしいほど当たり前なのにわたしにとっては全身の筋肉を駆使して力を振り絞らないとふつうに持っていけないような そんな状態を指します
愛する人の胸のなかで自分の異常性に泣いて、こわくなって、失望されないようにおやすみを伝えて、ひとり眠れずただ目から水を出します わたし自身の感情がまったく含まれない空虚な涙をひとしきり枯れるまで
でもひとつだけ
いつものように自責に駆られながら眠っている愛する人の美しい目をぼんやりながめているとき、比べると濁ってしかたがないはずのわたしをぎゅうと抱きしめてくれたとき、あぁわたしは生きていてよかったのだと涙があふれました それは他の涙と明らかにちがう桜色だと思います あたたかくてうれしくて ようやく死ななくてよかったこと生きてることを認められた瞬間でした
ばかばかしいわたしの日常
数日ぶりに出た外の世界は人で溢れていた 愛する人からちゃんと愛されていた
つづく、